地震保険の保険金が出ないケースと出たケースの違いは何?支払い例もご紹介!
地震や津波などの災害が多い日本において、万が一のときに役立つのが地震保険です。建物の保険といえば火災保険が代表的ですが、地震や津波、噴火といった大規模災害によって家屋が損傷した場合には保険金の支払い対象にはなりません。そこで、大規模災害が発生した際でも一定割合の金額を補償する仕組みとして地震保険があります。
しかし、地震保険に加入していたとしても、損害割合や損害の状況によって保険金が出ないケースもあることをご存知でしょうか。今回は、保険金が出るケースと出ないケースでは何が異なるのか、損害認定されずに保険金を受け取れなかった場合でも、プロの代行業者に頼むと出る事もあるか、プロに頼むケースと頼まないケースで支払い金額が変わるかなどの例も含めて詳しく解説します。
地震保険の仕組み
まずは基本知識として押さえておきたい、地震保険の仕組みについて解説しましょう。地震や津波といった大規模災害が発生した場合、被災範囲が広いことから保険会社だけでは保険金を支払うことができません。
そこで、地震保険は国と民間の保険会社が合同で提供しており、公共性の高い保険といえるのです。また、地震保険は単独で加入することができず、火災保険とセットで加入することが原則となります。
2016年以前に加入した地震保険の場合、支払われる保険金は「全損」、「半壊」、「一部損」の3パターンに分けられますが、2017年以降の地震保険では「全損」、「大半損」、「小半損」、「一部損」の4パターンに変更されています。どのパターンに該当するかは主要構造部の損害状況や焼失・流出状況によっても基準が異なりますが、いずれにしても専門の鑑定士によって判断されます。
また、地震保険によって支払われる保険金は、契約内容によっても異なりますが火災保険の評価額の30〜50%と定められており、建物の場合は5,000万円、家財は1,000万円がそれぞれ上限となります。そのため、仮に「全損」と認定された場合でも、建物の時価額すべてが保険金として支払われるとは限らず、最大でも50%であることを意味します。
2016年以前の保険開始期 | 2017年以降の保険開始期 | ||
全損 | 地震保険の保険金額の100%(時価額が限度) | 全損 | 地震保険の保険金額の100%(時価額が限度) |
半損 | 地震保険の保険金額の50%(時価額の50%が限度) | 大半損 | 地震保険の保険金額の60%(時価額の60%が限度) |
小半損 | 地震保険の保険金額の30%(時価額の30%が限度) | ||
一部損 | 地震保険の保険金額の5%(時価額の5%が限度) | 一部損 | 地震保険の保険金額の5%(時価額の5%が限度) |
地震保険に加入しているのに保険金が出ないケース
地震保険の仕組みでも紹介したとおり、建物が焼失・流失せずに残っている場合には、主要構造部の損害状況によって保険金の割合が決定します。そもそも主要構造部とは、壁や柱、基礎、外壁など、建物の構造上不可欠な部分を指します。反対に考えれば、主要構造部に該当しない部分が損傷し、なおかつ主要構造部には損傷が認められなかった場合には、地震保険へ加入していたとしても保険金が支払われない可能性が高いことを意味します。
たとえば、建物内部の間仕切り壁や”ひさし”、屋外の階段、間柱などは主要構造部には該当しません。また、地震によって窓ガラスにヒビが入ったり割れたりすることも多いですが、こちらも主要構造部には該当しないため保険金の支払対象とはなりません。
また、家屋の近くに駐車場を併設しているケースも多いと思いますが、地震保険での対象となるのはあくまで家屋のみです。駐車場に取り付ける屋根(カーポート)や塀などが破損したとしても保険金の支払対象には認められないほか、それによって自動車が破損した場合でも地震保険の適応外となります。
地震保険での保険金が出るケース
では反対に、地震保険に加入している状態で保険金が出やすいのはどのようなパターンなのでしょうか。
家屋そのものが焼失・流失
地震による被害と聞くと、強い揺れによって家屋が倒壊するイメージを抱くことも多いですが、必ずしもそれだけとは限りません。たとえば、二次災害によって火災が発生し、一部または全部が焼失することもあるでしょう。自宅から火災が発生しなくとも、近隣の住宅から火の手が上がり、消火が遅れ周囲の家屋まで延焼するケースもあります。
さらに、海岸に近い場所に自宅がある場合には、津波が発生し家屋が流されることも懸念されます。地震保険は家屋の焼失または流失に応じて全損から一部損と認定され、被災状況に応じた保険金が支払われます。
主要構造部の損傷
強い揺れによって、建物の柱や外壁、基礎などの主要構造部にダメージを受けた場合、保険金の支払対象として認定されます。主要構造部がどの程度のダメージを受けているのかは専門的な知識がある鑑定士でなければ正確に把握できません。
一見するとヒビや傷がないように見えても、鑑定士が見ると想像以上に損害が発生しているケースも珍しくないのです。また、鑑定士は主要構造部の損害がいつ頃発生したものかを把握することも可能です。そのため、地震によって生じたヒビや傷ではないかもしれないと感じていても、まずは鑑定士に自宅まで訪問してもらい、状況確認を依頼することが重要といえるでしょう。
家財の損傷
地震保険は建物だけでなく、家財道具に対しても補償範囲に含まれます。たとえば、テレビやエアコン、冷蔵庫、洗濯機といった家電製品はもちろんのこと、食器類や衣類、家具といったものも家財道具にカウントされます。
ただし、家財道具の損害をカウントする場合には、品目ごとに1点となります。仮に、食器が落下し20枚割れてしまったとしても、あくまでも1つとしてカウントされるということです。
また、家財の損害時に保険金が支払われる条件としては、家財総額の10%を超えている場合に限られます。地震によって皿が数枚落下し、あとの家財道具はすべて無事という場合には補償の対象とならないケースが多いため注意しましょう。
なお、家財の損傷において覚えておきたいのは、高い価値のある絵画や骨董品、その他美術品などは補償の対象とならないことです。大切な財産を安全に管理するためには、自宅以外の保管場所を別途確保しておくか、耐火金庫などに保管しておくようにしましょう。
支払い認定をされなった場合でもプロに頼めば認定されたケースもある
申請をした事のない被保険者が申請してみた結果、損害認定されずに保険金が受け取れなかったケースは多数あります。
そのような場合の多くが、表面的に見えていなかった部分を点検できない事にあります。建物の構造に精通していて、申請業務に慣れている業者に任せると、外から見えない内部等の点検をする事で隠れた損害を見逃さず認定されたケースなど、多数あるのでまずは相談してみるのが良いと言えるでしょう。
地震保険に加入していた場合の保険金支払い例
地震保険に加入していた家屋が被災した場合、実際に支払われる保険金はいくらなのかが気になる方も多いことでしょう。そこで今回は、火災保険の評価額3,000万円の建物が被災したと想定し、支払われる保険金をシミュレーションしてみましょう。
全損の場合
主要構造部の損傷割合が50%以上の場合、または延床面積の70%以上が焼失・流失した場合に全損として認定されます。
【保険契約内容が火災保険評価額の30%の場合】
3,000万円×30%=900万円
【保険契約内容が火災保険評価額の50%の場合】
3,000万円×50%=1,500万円
大半損の場合
主要構造部の損傷割合が40%以上50%未満の場合、または延床面積の50%以上70%未満が焼失・流失した場合には大半損として認定されます。
なお、大半損の場合は地震保険の保険金額に対して60%が保険金支払額の限度となります。
【保険契約内容が火災保険評価額の30%の場合】
3,000万円×30%=900万円 900万円×60%=540万円
【保険契約内容が火災保険評価額の50%の場合】
3,000万円×50%=1,500万円 1,500万円×60%=900万円
小半損の場合
主要構造部の損傷割合が20%以上40%未満の場合、または延床面積の20%以上50%未満が焼失・流失した場合には小半損として認定されます。
なお、大半損の場合は地震保険の保険金額に対して30%が保険金支払額の限度となります。
【保険契約内容が火災保険評価額の30%の場合】
3,000万円×30%=900万円 900万円×30%=270万円
【保険契約内容が火災保険評価額の50%の場合】
3,000万円×50%=1,500万円 1,500万円×30%=450万円
一部損の場合
主要構造部の損傷割合が3%以上20%未満の場合、または床上浸水(地盤面から45cmを超える浸水も含む)した場合には小半損として認定されます。
なお、大半損の場合は地震保険の保険金額に対して5%が保険金支払額の限度となります。
【保険契約内容が火災保険評価額の30%の場合】
3,000万円×30%=900万円 900万円×5%=45万円
【保険契約内容が火災保険評価額の50%の場合】
3,000万円×50%=1,500万円 1,500万円×5%=75万円
地震保険を見直し保険金の支払い条件を確認しておこう
今後高い確率で発生するといわれている南海トラフ地震に代表されるような、大規模災害へ備える意味でも地震保険は重要です。被災した後、自分自身の住居を確保し本来の生活を取り戻すためにも、地震保険の内容をあらためて見直し、いざというときにどの程度の保険金が支払われるのかを把握しておきましょう。